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2010年06月14日

小唄二題「沖縄観光小唄」「シンガポール小」

小唄二題
 今回は小唄?二題を取り上げたい。
「小うた」とは?音楽之友社発行の「音楽中辞典」によると、1.小歌 短い歌の意味で、中世近世の狂言小歌、隆達節、弄斎節(ろうさいぶし)、投節(なげぶし)などをさす。
2.小唄 近世三味線音楽のひとつで、幕末に端唄(はうた)から発生した短く軽快な歌曲。清元関係者の余技からはじまった。

「沖縄観光小唄」歌・フォーシスターズ
(マルフクレコード FF-208 1975)
沖縄観光小唄
 沖縄の民謡にも「小唄」と名のつく歌名は多い。ここで取り上げるのは、海洋博の頃にプレスされた、「沖縄観光小唄」。この作品の作詞者・喜瀬登氏の書いた「レコード出版にあたって」という思いを述べた一枚の趣意書がレコードと一緒に保管してあった。それは氏が長い間、胸の中で構想していた夢が実現できた喜びを書きためているもので、ひとつのオリジナル作品ができあがるまでの思いと苦労は大変なものだと今更ながら感じ入ってしまった。氏は言う「最近の沖縄民謡は流行化して、質が低下してしているように感じますし、単に世の中に、流行って人気を得たら良い良いというものではいけないと思います」民謡ファンへのメッセージを、ぜひあの時したためておきたかったであろう作者の情熱は、沖縄大衆音楽を支えてきたひとつの雫として記録されても良いものだと思う。

「シンガポール小」歌・津波恒徳
(マルテルレコードMT-1005 沖縄レコードORE-132)

シンガポール小 津波恒徳歌う「シンガポール小(ぐゎー)」というユニークな歌がある。これは戦前の沖縄で、貧乏ゆえ海外まで出稼ぎに行くときに、その道中を日記風に綴って三線に奏でて歌っていくものだ。津波恒徳が先輩達から聴いて仕入れた歌のひとつだ。しかしこの歌は元々「シンガポール小唄」という題名であったという。何の手違いか、「唄」が抜けてしまって、小がウチナーグチ読みの「ぐゎー」なったものだという。氏の作品には、例の古謝美佐子のデビュー作「すーしーすーさー」(FS-71)という、実際のタイトルは「すーさーすーさー」のはずだが間違ったままの題名でずっと歌われたのもある。これも印刷ミスのようだが、そんなこと気をとめない津波恒徳氏も悠長なもの。であるからにして、沖縄民謡でいう「小唄」とはどういうものか、一度は悠長に考えたいものではある。

小浜 司の『ryuQ100歌』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73392.html

小唄二題「沖縄観光小唄」「シンガポール小」
筆者プロフィール:小浜 司(こはま つかさ)
島唄レコード百花繚乱 — 嘉手苅林昌とその時代(小浜司・著)沖縄県国頭郡本部町出身。幼少期を那覇市で過ごし、中学以降宜野湾市に遊ぶ。大学卒業後ヤマトへ。季節工などの底辺労働に従事しながら、アメリカ、東南アジア、中国、アラブの国々を旅する。沖縄に帰り、クリーニング屋の経営をしながら大城美佐子や嘉手苅林昌のリサイタルなどをプロデュース。「風狂歌人」(嘉手苅林昌)や「絹糸声」(大城美佐子)など沖縄音楽CDを多数製作。2002年、国際通りに島唄カフェまるみかなーを開く。2004年沖縄音楽デジタル販売協同組合に参画しインターネット三線教室を始める。2006年、拠点を壺宮通り(那覇市寄宮)に移し、島唄カフェいーやーぐゎーを開店。沖縄音楽の音源や映像の楽しめる店として好評を博している。著書「島唄レコード百花繚乱 — 嘉手苅林昌とその時代」を発売した。
島唄カフェいーやーぐゎーHPhttp://www.ryucom.ne.jp/users/iyagwa/



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