2007年07月23日
魔よけの巻[草花編]

“沖縄は魔よけ大国だ”といっても過言ではないくらい、見渡せば「魔よけグッズ」に囲まれて生活していて、例えば、
ススキや茅・芭蕉で作る「サン」や「ゲーン」は、手軽にこしらえられる魔よけであるし、桑の木は地震の時の「クワーギヌシチャ(桑の木の下)」の呪文にもなっています。
我が家では、最近、デーク(竹)の鉢植えを購入した。これは屋敷の四隅をまもる<効果>があるらしい。そんなこんなで、魔よけネタは豊富な沖縄。

その1・『モクビャッコウは石敢当(石敢當)』…石板に「敢えて石に当てる(あえて いしに あてる)」と書いて石敢当、有名な魔よけですね。ここ沖縄の魔物は直線でしか進めず、ものすごいスピードで目をつけた家をめざして突入してくるらしいのだ。これを避けるには石敢当に激突させて木っ端微塵にするといいます。
石に当ったぐらいで砕けるような魔物を果たして恐れるべきかどうかの議論が私の周りでブームになっているが、それはさておき、この石敢当の正しい置き方なのです。
基本は三叉路か突き当たりに置くものだけれど、最近は門の両脇に置かれていたり家の中にあったりする。しかし今は悲しいかな、魔よけなのに沖縄風オブジェキャラに成り下がってしまいましたなぁ。
魔よけの石敢当、今日では、マンションやアパートの向かい合うドアの前、そして門とは言えども、お向かいの家に向かっておくのはいかがなものかと、老婆心ながら思ってしまうのでした。
自分の家に向かって魔よけを置かれたとしたら、魔物扱いされた感じで気持ちの良いものでは無い。「魔よけには魔よけ返しぃ」と、応酬合戦で町の通りが「魔よけ通り」になりかねない。これって、杞憂ではないのだ。実際、事が起こったケースもあるというから、怖いですねぇ。
そんな事で石敢当を置きたいけど置けないあなた!
こんなときには、「モクビャッコウ」なんです。
以前、久高島で「モクビャッコウ」が群生する海岸を見たときの衝撃はすごかった。
さながら「雲海」のような「モクビャッコウ」の向うに広がる群青色の海。
幽玄な景色にしばらくボーゼンとしてしまったくらい。
人の手がはいらない自然ってこんなにも威厳があるのかって感動したもんです。
さて、この「モクビャッコウ」の効能だが、石敢当のように魔物を当てて木っ端微塵にするだけでなく、白檀に似た香りで浄化させてくれるという優れもの。
〜キク科の植物・沖縄名・「イシヂク(石菊)」。〜
フワフワなうぶげの生えるこの銀葉にこんな効果があろうとは!
キク科だからもちろんだが、小菊のような可憐な花を咲かせてくれる。
蒸れに弱いのが難だが、風どおしを良くすれば、割合育てやすい品種です。
あなたの町の通りを「魔よけ通り」ならぬ、「モクビャッコウ通り」にしてフワフワな雲海通りにしちゃいましょう。
その2・『モモ』……男のほうが女々しかったりするのよねぇ。「桃」の話です。内当い(ウチアタイ)しないで下さいな。
音読みで「トウ」。
刀に似る発音から「悪を切る」そう。
「悪を切る」といえば、『桃たろう』。
幼いころから聞き親しんだ昔話ですね。
とまぁ、連想ゲームになるくらい、桃は私達の身近にある魔よけなんです。
由来は、遡る事とっても大昔(歴史に弱いので)、古事記の時代です。
イザナミノミコトとイザナギノミコトが活躍していた時代のこと。
イザナミノミコトは火の神を生んだ時、産後の肥立ちが悪く亡くなってしまいます。
妻を亡くしたイザナギノミコトは、妻恋しさに黄泉の国を訪れます。
が、黄泉の国のイザナミノミコトは、既に生前の美しい姿ではなく化け物のようになっていたそう。
それを見たイザナギノミコトは驚き、この世に戻ろうと逃げようとします。
化け物と化した妻はたくさんの黄泉の国の軍勢と共に夫を追いかけます。
夫は、逃げる合間にそこいら中に実っている物を投げつけます。葡萄であったり筍であったり……。
ところが化け物たちは喜んでそれらを食べつくし、なおも追いかけてきます。
やっとこさ、この世と黄泉の国の堺にある坂にきたところ、そこに偶然なのか何なのか、桃がなっていたそう。
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2007年07月16日
スクスク育つ前のスクをスクって食べよう

先月6月18日は旧暦5月4日のユッカヌヒーで、県内各地の漁村では大雨のなかハーリー(糸満市ではハーレーというけど)が行われた。前回、このコーナーでボクは、沖縄では「ハーリー鉦が鳴り響くと梅雨が明ける」と書いたが、ハーリーの当日は大雨であったにもかかわらず、ハーリーが始まる頃にはやや小降りになり、終わる頃には小雨となった。そして夜には星も出て、さらに翌日には空は晴れ上がり、なおかつ梅雨前線まで消滅していたので、ボクは、さすがというか、梅雨前線まで消してしまう「ハーリー鉦の威力、恐るべし!」と思った。ウチナーンチュならば梅雨が明けるとハーリー鉦が梅雨を追い払ったと思うけど(かどうかはしらないが)、情報社会の現代では某国の諜報部あたりが梅雨前線を消滅させたハーリー鉦に目をつけ、兵器として利用しないか心配である。願わくば、ハーリー鉦が平和利用されることを念じてやまない今日この頃である。
で、何が言いたいのかといえば、早い話、ハーリー鉦が響いたら梅雨が明けた沖縄は、旧暦の年中行事どおりにちゃんと動いているなぁと、ちょっと自慢したかっただけである。あ、それから、6月の22日は夏至だったので、沖縄ではカーチーベー(夏至南風)が吹いて、むせるような夏の香りが風の中に含まれていたよ、とも言いたかったのである。
というわけで7月の行事である。新暦では7日の七夕があるが、旧暦6月の行事では6月15日の「六月ウマチー」(新暦7月28日)、6月25日(新暦の8月7日)の「強飯折目(カシチーウイミ)」がある。「六月ウマチー」とは「稲大祭」と呼ばれる稲の収穫祭で、稲の豊作を感謝して、神様に「五月ウマチー」と同じように収穫した五穀やミキと呼ばれるお粥を醗酵させた飲み物、泡盛、ウサチ(酢の物や和え物のこと)を供えるという。また、「強飯折目」は「六月カシチー」とも呼ばれ、各家庭で新米の糯米で作った強飯(カシチー)とお汁を作りヒヌカン(火の神)や仏壇に供えて豊作を感謝するという。
とはいっても、どちらかといえば子どもの頃から年中行事を欠かさなかった我が家ではナゼか「六月ウマチー」や「六月カシチー」をやった記憶がない。「五月及び六月ウマチー」がどちらかといえば国家的プロジェクトとして公の農耕儀礼として行われており、「六月カシチー」は農家を中心とした行事だったこともあり、那覇の貧しい士族の流れを汲む我が家としてはあまり関連性のない年中行事だったからではないかと思われるのである。それから、最近では「ウマチー」も「カシチー」も我が家だけでなく、ほとんどの家で関係なくなってきているのである。
というわけで、今月もボクは紹介する食べ物はどうするか悩んだのである。この悩んだ現状を誰かに救ってもらいたいと思ったとき、「救って、救う、スクう、スク」と考えたところで「ピーン」と閃くものがあった。「そうだ、今月はスクを紹介しよう」何しろスクは毎年、旧暦5月25日から6月25日前後の大潮になると、沖縄近海のさんご礁の浅瀬の海に大群をなしてやってくるからである。
海の色が変わるほどのスクの大群がやってくると、ウミンチュはもちろん、海のそばに住む勤め人や農業人も、どんな仕事をしていてもほったらかして海に飛び出していき、力を合わせてスク漁に勤しむからで、スク漁は今のシーズンというか、初夏の風物詩ともいわれているからである。ちなみにスクとはアイゴの稚魚のことで、浅瀬の藻を食べたとたん磯臭くなり、スクとしての味わいや風味が劣り、商品としての価値もなくなってくる、まさに季節限定、かつてはウミンチュ限定の夏の初めの味わいともいえる食べ物であった。 続きを読む
2007年07月09日
小浜司の『ryuQ100歌』7月号

『おじさん/センスルー節』(マルフクレコードKF-56)
1995年、東芝EMIより「チャンプルー・シングルズ」というCDが発売された。これはEPレコードをターンテーブルで再生して、デジタルサウンドにリミックスしてのコンピュレイション・アルバムだ。2枚のシリーズもので、ボリューム1は滑稽ものを集めたもので、2は戦争・移民・平和をテーマとした。音源となったレコードは私が選曲し提供(1曲を除いて)した。解説などというものもその時初めて書いた。我ながら良い仕事ができたと思い、そのギャラでまたレコードを集めようと思ったりしたが、待てど暮らせど手間が来ない。コーディネーターのKに持ち逃げされたらしく、おまけに撮影用にと貸したジャケットも2枚紛失され、何処へ問い合わせても知らぬ存ぜぬの責任転換のたらいまわしであった。出来上がったCDを見ても私は制作協力者でしかなかった。腹が立つには立ったが、当時私は別の仕事が忙しくて、送られてきたCDもほったらかしておいていた。
何年か経って、改めてこのCDを手にとって聴いてみると、なかなかすばらしい。自分で針を落として聴くときのレコードの傷音も一緒となると、過去のことは忘れましょうという気になる。このアルバムに収めた曲は単にマニア向けのレアなナンバーではなく、結構聴かれて、ラジオなどからもよく流れた曲を選んだつもりだ。そういう意味で最も特徴的なレコードがこのCDにも納めた「おじさん/センスルー節」といえようか。登川誠仁のレコードの中でも最も売れた作品ではないか。ジャケットも幾種類かある。舞踊家・志田房子の若い頃の歌声でセイ小との掛け合いは絶妙だし、センスルー節をポピュラーにしたのはこのレコードといっても過言ではない。
『職業口説』(しょくぎょうくどぅち マルフクレコードKF-254)
うえの「センスルー節」が広く一般に聴かれたのに対して、これもチャンプルーシングルズに収めたが、玉城朗永歌う「職業口説」は玄人向けというか、十八番大会などで披露するための裏レコードといえる。とはいっても熱心なラジオファンにはバレバレのネタなのだが、それに照屋林助や小那覇舞天の「職業口説」とチャンプルーすると今でもウケるのは間違いない。「センスルー節」も口説(くどぅち)の一種で、口説囃子に沖縄漫談の様式を取り入れ滑稽にしていく。ここでは沖縄の各地の方言の訛りを変化させていく。
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2007年07月02日
『造型の彼方』清田政信著ひるぎ社/二十七年目の「少年論」

梅雨も明けたので、与儀にある県立図書館に、今編集している市場に関する本の資料を借りに行く。久々だ。あの恐ろしい夏の、本気の日差しがまぶしい。駐車場横の木陰には行くあてのない風情でゆくっているおじさんが、ひとり、ふたり。与儀の図書館の周りは、いつ行っても、浮き世とかけ離れた雰囲気が漂っている気がするのはなぜだろうか。僕自身、大学卒業したあと、沖縄の若者らしく失業してこの街でどこにも行き場所がなかった頃によくここに来ていたからかもしれないなぁ。ハロー・ワークの出張所を図書館横に設置したらいいかも……とまぁそういうことは慶良間沖にでもおいといて、さっそく一階の沖縄コーナーへ目当ての本を探す。ここにくればだいたいの沖縄関係の本を目に通すことができる。名護市史のいくつか、那覇市史の改訂版などを抜き出す。そのついでに久々なので、沖縄コーナーを一巡りすることにした。そこで、ふと思いついて文学関係の棚へ。……あった。清田政信『造型の彼方』(ひるぎ社1984)。初めて手にする本だが、ぱらぱらめくって確認する。やはりこれだった。探してた随想が収録されていた。
僕がその名前を知ったのは、高校三年生の時。沖縄タイムスに載っていた随想を読んだのだ。当時なぜかしらものすごく納得してしまって、クラブの後輩なんかに、新聞にとってもいい随想が載っていたから読んだらいいよ、なんて勧めた記憶がある。どういった内容だったのかはあまり思いだせないくせに、清田政信(きよたまさのぶ)という人が書いたものだということだけは覚えていた。彼がどんな人かというと……七十年代から八十年代前半、沖縄は、詩人の時代だった、という印象が僕の中にはあって、あんまり読んでたわけではないのだが、書店の沖縄コーナーでも詩集の点数は目立っていた記憶がある。多分、五十年代、六十年代の沖縄の文学潮流の中心である「琉大文学」の関係者が次々と作品集を発表していたからだろうか。その中の一人である清田政信は、あの目取真俊をして〈学生時代に最も強い印象を受けた〉というほどの詩や評論を発表していた詩人である。沖縄の現代詩、評論関係にはからきし弱い僕でも、この人は別格ではないかと思うくらい、その方面では影響力があったようだ。
しかしそのエッセイを読んだ当時、僕はもちろん彼がどういう人かまったく知らない高校生だった。
あれから27年たった。さてどんな文章だったのか、それが知りたくてその随想のはじめの頁をめくった。
〈少年とは何か?それは自らの出生から出て他者に出会うための永い感受性の苦しみではないか。彼は思考を集中して存在の核心に到達するには言葉の乾いた抽象力に突きあたっていないし他者を明確な像として成立させるためには内面をとらえる意識がまだ薄弱だ。だが彼は明日の方からおそいかかる世界の不安に対して言葉になる以前の心域を集中することによって、言うなれば全存在をかけて立ち向かっている。この時期の少年の生き方をどのようにその後の生涯につなげていくかによって人の〈生〉は深くもなるし、浅くもなる〉 「少年論」
あの季節の空気がふわっと蘇った気がする。そうか、この文章は、僕に直接語りかけてきたのだと思ったんだな、僕のことを言っているぞと。少年とその孤独についてこういう風に語りかけてくる文章を、沖縄の人が書き、それが沖縄の新聞に載るものだとはまったく思っていなかったのだ。その時のインパクトがなぜかしらずっと僕の心の片隅に刻印されていたのは、例えば次のような言葉だったかもしれない。
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