2009年11月30日
ぬちぐすいやさ
このところ南国沖縄もめっきり秋めいてきた。
沖縄では、特にお年寄りは、20℃くらいに気温が落ちると「寒いねえ」と、肩をちぢこませる。40℃に近い気温を長期間過ごせば20℃は「涼しい」のではなく「寒い」のだ。
この季節になると、母の得意料理である「トウンジー ジューシー」と「鶏飯」が無性に食べたくなる。
これらは、祖母から代々嫁や娘に受け継がれてきた我が家の味だ。
「トウンジージューシー」とは、冬至の日に食べる炊き込みご飯で、沖縄では炊き込みご飯を「ジューシー」と呼ぶ。
では、なぜ、冬至に「ジューシー」なのか。
うろ覚えの記憶だが、祖母は冬至が昔の大晦日にあたったと言っていた。一年で一番長い夜を過ぎれば、あくる日からは日が長くなる一方なので、冬至の翌日は正月と言った具合であったと思う。
なので、肉や野菜やかまぼこをタンといれた具沢山のぜいたくジューシーは、祝いの食事にぴったりなのだそうだ。
つまり、太陽を中心に考えていた行事なのですな。
でも、沖縄では、月を中心にした陰暦を主に使っていたのではないかい?
今になれば、そういう疑問がわき上がってくるが、当時の私はただ素直に「へえ」と感心しているだけだった。
母にきいても「ごちそうを食べる口実がほしかっただけなのよ」と、そっけない。
そしてトウンジージューシとともに仏壇に供えられるのが、鶏飯。
鶏飯は、鶏肉やしいたけや焼き卵の細切り、みかんの皮を干して千切りにした具を放射状に飾りだし汁をかけるカラフルな料理である。
みかんの皮を干したものを漢方では「陳皮」といい、体を温め、代謝を良くするそうだ。ただ、市中の琉球料理店ではこの陳皮が添えられている事に出会った事がない。私的には物足りなさを感じるが、もしかしたら、体の弱い私のための祖母流の具材だったのかもしれないなぁ。まさに命薬だったのね。
みかんといえば、いつだったか、京都の神社でこのような話を読んだ。
「みかんは、我が国国有の常緑樹で、常緑=永遠ということから尊ばれてきました。昔から不老不死の霊薬とされ、みかんを神火で焼く事により、さらに霊験が加わるといわれています」。
なるほど、闇夜が長い冬至に柚湯に入るっていうのもそういうことなのかもしれないなあ。「体を温める=魔(風邪)を寄せ付けない」ということで「ゆーずー(融通)がきくから、柚湯」って事ではなかったのか。
なにせ、行事やしきたりは健康に過ごす智恵のかたまりみたいなものなので、やっていて損はないのだと、恐れ入った秋の夜なのでした。
●比嘉淳子の『ryuQ100花』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73394.html
プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)
2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、新刊『家族まるごと福お祝いマニュアル』(双葉社刊)が発売中。
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