2007年06月25日
「いめんしぇーびり」と、花の香りでお出迎え

「沖縄ってさぁ、香りを楽しむってこと、しないよね」……。
先日、とあるクース(古酒)barで友人が言ったが、大きな誤解である。
なぜにそんな誤解が生まれたかは定かではないが、沖縄も昔から香りをたのしみ、且つ、生活に上手に利用してきた。流派こそなけれども、花を活け、香りを楽しむことくらいはやっていたのだ。
南国の花はくらむほど芳しく香る。
玄関の脇に植えたり、便所の周囲に植えたりと活用は広いし、ネーミングだっておもしろい。オバァたちが呼ぶ「ジュリ花」は、夕暮れに甘ったるい香りを漂わせる白花で、その色香にぴったりのネーミング。
そんなセンスの良さはいろんなところに使われている。
沖縄のクースの品評会は、昔から「香りで順位付け」していたという。
そう、昔は泡盛の鑑定をする際は香気が重んじられ、梅の香りに近いものが優秀で、次が髪油の香り、そして熟れたホオズキの香り、云々とされていたそうだ。沖縄の香り自慢その一にあたる。

まだある。ほら、泡盛の次にくる沖縄の代表的なドリンクといえば、「サンピン茶(茉莉花茶)」である。
あれだって「茉莉花(まつりか)」という花を早朝、まだ開ききっていないうちに摘んでお茶に入れて飲んでいた。今で言うフレーバーティーを沖縄では愛飲していたのだ。香りが揮発しないよう開花直前の蕾に香気をふくませ、一気にアチコウコウのお茶を注ぎ、立ち上る湯気のふくいくたる香りを楽しんだ琉球人の風流なこと。沖縄の香りの話、その二。

ここでいう「ショウブ」はいわゆる「香りショウブ」で「花ショウブ」ではないのでお気をつけあそばせ。「ショウブの茎」を噛むとシナモンのようなさわやかな香りが口一杯に広がり口臭予防にもいいという。子供の頃、黒糖をたっぷり吸い込んだ「ショウブの茎」が捨てられなくて甘菓子を食べつくしたあとも吸っぷっては怒られたなぁ。あ、そうそう、吸っぷってヘロヘロになった「ショウブの茎」を捨てるとき、投げてはいけないんだとか。「勝負をなげる」のは卑怯なのだそうだ。
ショウブに関しては、ちょっと長くなる。
ヤナムンはよい香りに弱いそうだ。
特に、ショウブの香りを嗅ぐとヤナムンは溶けてしまうそう。また、ヤナムンに目を付けられた人間の姿を隠してくれるという優れものらしい。
これは、香りを利用した知恵と言い伝えで、沖縄の香りの話その三。
そして、ま〜だまだまだある。
「月橘」(げっきつ)。あれが多く咲く年は大きな台風が襲来するとお天気予報の言い伝えがあるほどなのだ。
「月橘」の花は生垣によく使われ、フレッシュな柑橘系の香りの花を咲かせ、しかもこの香りは蚊やハエを寄せにくくするといわれているから出来過ぎなくらいである。香りで防虫するから、香りの話、その四。
こうやって、しっかりと香りをたしなむ風習が昔ながらの生活の中にはあるのです。
沖縄は、昔から来訪者を大切にする邦で、門の近辺には香りのある植物を植えており、今でも、古い家の庭先に立派に育った「サンユウカ」や「ヤコウボク」をみたりする。客人を招く時には、さりげなく庭の木から枝を切ってそっと飾ったりしたそうで、それが「ウチナーわびさび」なのかもしれない。
我が家でも、客人が最初に足をいれる門周辺には香りを放つ植物を植えている。道行く人にも香りを楽しんでいただき、四季の移ろいを感じて欲しいとも思う。
ふと、どこからかかぐわしい香りが鼻をくすぐる時、人は足を止めてあたりを見回したりする。この時代、そんな心の余裕が大切なのかもしれない。

プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)
2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、新刊『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社)が発売中。
沖縄の人気blogランキングはこちら
「月橘」の花は生垣によく使われ、フレッシュな柑橘系の香りの花を咲かせ、しかもこの香りは蚊やハエを寄せにくくするといわれているから出来過ぎなくらいである。香りで防虫するから、香りの話、その四。
こうやって、しっかりと香りをたしなむ風習が昔ながらの生活の中にはあるのです。
沖縄は、昔から来訪者を大切にする邦で、門の近辺には香りのある植物を植えており、今でも、古い家の庭先に立派に育った「サンユウカ」や「ヤコウボク」をみたりする。客人を招く時には、さりげなく庭の木から枝を切ってそっと飾ったりしたそうで、それが「ウチナーわびさび」なのかもしれない。
我が家でも、客人が最初に足をいれる門周辺には香りを放つ植物を植えている。道行く人にも香りを楽しんでいただき、四季の移ろいを感じて欲しいとも思う。
ふと、どこからかかぐわしい香りが鼻をくすぐる時、人は足を止めてあたりを見回したりする。この時代、そんな心の余裕が大切なのかもしれない。

プロフィール:比嘉淳子(ひがじゅんこ)
2児の母。すっかり“沖縄のおばぁ”的存在になりつつあるこの頃。
『沖縄オバァ列伝・オバァの喝!』『オジィの逆襲』(双葉社刊)、『琉球ガーデンBOOK』『よくわかる御願ハンドブック』(ボーダーインク社刊)、『琉球新報・うない』『琉球新報・かふう』のほか、新刊『沖縄オバァ列伝・オバァの人生指南』(双葉社)が発売中。
沖縄の人気blogランキングはこちら
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。