2010年02月08日
追悼特集:「喜納昌永」と「吉田安盛」

今回は昨年末に亡くなった、沖縄民謡界の二つの巨星、喜納昌永さんと吉田安盛さんのアルバムを紹介してその業績を偲びたい。

(ゴモンレコード GTM-101)
喜納昌永さん(以後敬称略)といえば、今ではミュージシャンで国会議員(参院議員)の喜納昌吉の父親として有名だが、戦後沖縄民謡の第一黄金期を築き上げてきた巨人の一人だ。1920年生まれというから嘉手苅林昌と同級生だ。吹き込んだレコードの数も二人は東西の横綱である。その訃報を私が知ったのはクリスマスの日の新聞であった。88歳。沖縄島唄の普及と発展に尽くした生涯であったといえよう。
1960年代、民謡クラブの盛んな頃、大スター的存在として輝き、民謡をショービジネスとして確立させたその人こそ喜納昌永であった。後継者の育成も精力的で現在でも活躍する民謡歌手を排出し、「民謡三人娘」として活躍した饒辺愛子、吉里和美、玉井良子なども喜納門下から育った。結束の堅い一門でのファミリーグループの演奏は、まさにショーアップにふさわしく華やかで活気あふれるものであった。そんな雰囲気をまさしく漂わせているアルバムがこの『喜納昌永カチャーシー特集』である。録音日時のクレジットはないが、1967年だろう。この音源がデジタル化されたかはよく知らないが、いまでもこの雰囲気はつくり出せないのではないかと思うと合掌せざるを得ない。

(マルフクレコードFFG-11)
吉田安盛といえばラジオの民謡パーソナリティーである。目覚めの私語きはコーヒーよりも、サンピン茶と黒砂糖が似合う朝一番のミーチューヤー(目覚めに効く薬)であった。沖縄庶民の代表的な語り口は、まさに生活の香りであり、感情であった。復帰の年の1972年に極東放送の「ハイサイ、ウキミソーチー」から始まったというからキャリアは長く、ラジオ沖縄の「暁でーびる」では亡くなるほんの少し前までもその声はラジオから流れていた。
芸能プロダクション「盛芸能」のリーダーとして奥さんの盛和子と長年おしどり舞台をつとめた。さて、このアルバム、A面が吉田安盛作品集となっており、氏の手掛けた作詞作曲の歌を愛妻が歌うという、ほのぼのとしたものに仕上がっている。2曲目から聴けばだが。ところがA面のトップに自分の奥さんよりも酒を愛するダメ男としっかり女房の語り芝居「トゥックイ小」持ってきているところにこのアルバムのテレを感じるところである。私は二人の演ずる「トゥックイ小」を舞台で見たことがある。あの愛情たっぷりで迫力のある演技が今レコードの針先からよみがえってくる。12月13日になくなった。享年78歳、合掌。
●小浜 司の『ryuQ100歌』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73392.html

筆者プロフィール:小浜 司(こはま つかさ)

島唄カフェいーやーぐゎーHP:http://www.ryucom.ne.jp/users/iyagwa/
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