2008年07月07日
沖縄県産大学本とは?『やわらかい南の学と思想』など…

沖縄には大学がいくつあるか。答えは、八つ。順不同にして略称的に挙げれば、琉大、沖大、沖国大、キリ学(キリ短)、名桜大、芸大、女子短、そして看護大。他に、琉大の中にある放送大学や、その昔は「ご存じ!深夜大学」というラジオ通信制?の大学もあったのだが…。※1
で、県産本の絡みでいうと、沖国、つまり沖縄国際大学は、公開講座をまとめたシリーズの本やブックレットがある。初期の頃は、版元は、県内版元の数社に分散していたが、ここ数年は「編集工房 東洋企画」が版元となって一般書店でも発売されている。「編集工房 東洋企画」は、印刷所の出版社であり、『高等学校 琉球・沖縄史』新城俊昭著という高校の副読本でありながら、一般書としてベストセラーとなった本を出している。
しかし全体的にみれば、各大学が積極的に自分たちの本を出版するというイメージはあまりなかったのだが、今年は、沖縄大学が創立五十周年ということで、『小さな大学の大きな挑戦 沖縄大学50年の軌跡』沖縄大学五〇年史編集員会編著(高文研)※2が出たり、さらに琉球大学も『やわらかい南の学と思想 琉球大学の知への誘い』琉球大学編(沖縄タイムス社)が出たりと、ここにきて、各大学が独自の企画出版に乗り出してきたように見える。各大学とも学生の獲得競争が激しくなる中、国立大学である琉大も、のほほんとできなくなったのかもしれない。『やわらかい南の学と思想』は、これから琉球大学で学ぼうとする若者たちに、琉球大学の先生たちが、それぞれの専門分野の話を、興味を持ってもらえるような切り口で論じられている。「県内唯一の総合大学」故に、分野が多岐に渡っており、執筆する先生方も多くてA5判で400頁を超えて、なかなか分厚い。本を読まないとここ三十年ぐらい非難されている若者たちへの挑戦か!? できるだけ分かりやすく、やさしく書こうとしているみたいだが、そんなの関係ねー(古くてすいません)と、なかにはまったく研究論文スタイルで書かれている先生もいる。
要するに大学紹介の本なのだか、これがなかなか僕にとっても面白そうなタイトルが並んでいる。例えば「㈵ 沖縄の歴史を学ぶ」の中の、高良倉吉「レキオ(琉球)人の時代」と豊見山和行「近世琉球史像の見直し −紛争・商売・盗難」、そこに我部政昭「なぜアメリカは沖縄統治を行ったのか」が並ぶと、これは古琉球から近世琉球、さらに現代沖縄にまで及ぶ幅広い範囲を考察する内容になる。それぞれ多くの単著がある先生たちの、現在の研究の視点が確認できる。「㈼ 変容する沖縄の社会と民俗」では、赤嶺政信「キジムナーの民俗学」がおもしろい。沖縄でもっともポピュラーな存在であるマジムン(妖怪?)キジムナーと沖縄の人々との関わり、つまり「あくまでもそれを信じ「想像」した人間についての研究」のエッセンスが、分かりやすく、また研究論文としてのおもしろさも味わえる。
〈キジムナーのマスコット化という今日的現象は、我々の社会が長い歴史を通じて維持してきた人間と自然との緊張関係が失われてしまったこと、あるいは失いつつあることと相関の関係にあると考えていいだろう〉(「キジムナーの民俗学」終わりに より )
他にも、言語、文学、観光、自然、災害と建築、医と健康など、総合大学らしい内容が並んでいる。昔はね、沖縄の大学は地域のその研究の成果を還元していない、という声もあったが、現在は、逆に、地域に「知的」にも開かれた場でなければ、生き残れない時代になったようで、これからさらにたくさんの「沖縄県産大学本」が生まれてくるだろう。
あっ、書き忘れた。もうひとつ、琉大から出た書籍がある。そしてこれは非売品である…
去年初めて設立された琉大独自の文学賞「琉球大学 びぶりお文学賞」の受賞作品を集めた小説集だ。タイトルは「発掘された琉大文学の水脈」である。この文学賞は、応募対象者は琉大の学生のみなのだ。沖縄戦後史にかかせない「琉大文学」の存在と、芥川賞作家を二人輩出している大学として、なかなか意欲的な企画だと思う。なんといってもこの文学賞、実は、今現在の沖縄県内の文学賞の中で、一番、賞品が豪華なのである。「受賞作一編 欧米往復航空券+滞在費補助(五万円)」なのである。今回は「あおい海の目で」山原みどり作が、受賞している。興味がある方は、琉大の図書館に問い合わせてもいいだろう。そして賞を目指す人は、まず琉大に入るための勉強をしよう?! ※1=1970年代に琉球放送ラジオで放送されていた深夜番組。ちょっとHな内容に当時の中高校生に絶大な人気を誇った。PTAからの抗議も多数あったというからその人気のほどが知れよう。本当の大学ではないので……。
※2=ある意味沖縄県産本の版元以上に沖縄にこだわっている出版社。『観光コースではない沖縄』など沖縄の現状を憂い、その問題点を浮き彫りにする本多数。
●新城和博の『ryuQ100冊』バックナンバー:
http://ryuq100.ti-da.net/c73391.html

プロフィール:新城和博(しんじょうかずひろ)
沖縄県産本編集者。1963年生まれ、那覇出身。編集者として沖縄の出版社ボーダーインクに勤務しつつ、沖縄関係のコラムをもろもろ執筆。著者に「うっちん党宣言」「道ゆらり」(ボーダーインク刊)など。
ボーダーインクHP:http://www.borderink.com/
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